アラハンチャレンジ4th(前編)

御苗場に関連した作品展示イベントが一段落し、部屋もスッキリ片付いてポッカリ空いた空間を前にすると、なんだか心の中も虚無に満たされてしまい、しばらくは次の目標を見出せず悶々と過ごしていました。普段の休日は寝っ転がってソシャゲとマンガという自堕落生活ですが、ヤマノススメという登山好き女子高生のマンガを読んでいると再び山への意欲が高まり、勢いで山小屋を予約!2日がかりで、東京都最高峰の雲取山を目指すことになったのです。

 東京都最高峰というキャッチフレーズに惹かれて、東京赴任記念としていずれ挑戦しようと思っていましたが、まさか大ヒットコミック「鬼滅の刃」主人公の出身地設定されていると知らず、ご当地は市松模様の旗がいっぱい並んでいました。日本百名山にも選定され、大好きな富士山も望める。日帰りは健脚でないと難しい点がネックでしたが、週末は梅雨入り前の最後の晴れ間が予想され、小屋泊が決まった事で食料や野営、炊事道具をごっそり減らせる。歩くだけなら何とかなるのではないかという読みでした。

 自宅から山梨方面へ車を走らせる事90分、多摩川の源流に近い奥多摩湖の北に、丹波山村営駐車場があります。無料で50台ほどのキャパがあるものの土日は早々に埋まると聞いて、早めに移動して車中泊するつもりでした。しかし不運なことに、金曜の仕事が転居以来初の猛烈な重労働(プリンタ二人で13台交換)だったため、直行直帰で8時に帰宅したものの、食後の仮眠で気づいたら朝5時!一瞬状況が飲み込めなくなりましたが、緊急事態宣言中なのでまだ間に合うかもと、とりあえず車を飛ばし朝7時に到着。淡い期待に反し駐車場はガッツリ満車でしたが、かろうじて1kmほど下った路肩に車を押し込む事ができました。

 準備を整えて駐車場まで歩き、おにぎりの朝食と立派な水洗トイレで用を足してから、登山届を提出して7時過ぎに出発。コースタイムで5時間と聞いていたので、過去の履歴から倍の10時間と予測しましたが、途中数多くのハプニングに遭遇する中、17時に山小屋に着いたのは頑張った方だと思います。例によってスタート前から腰や膝に痛みを覚えつつ、恐る恐る歩みを進めましたが、最初のハプニングは、出発2時間後のザック滑落!シカに会えるかもとの事で望遠コンデジを持っていったのですが、なんと登山道を横切る「猿」の家族が出現!手近な木にザックを立て掛けてコンデジを取り出し、ファインダーを覗いたら既に姿が見えず。意気消沈してカメラを仕舞おうとザックに手を掛けたその時、おむすびころりんが如くコロコロとザックが転げ落ち、なんと40m下の切り株に衝突して止まっちゃったのです!

 機材類は全て身に付けていたバッグに入れていたのが幸いでしたが、流石に水や食料を含んだザックなしでは、登山どころか無事に引き返す事すら危ぶまれます。ロープは持ってきていませんでしたが、双石山でのバリエーションルート攻略を思い出し、木の根と三点支持を使ってなんとかザックまで到達。サイドポケットに入っていた小さなショッピングバッグと傘、750ccのアクエリアスが入ったボトルを紛失しましたが、ザック一式は回収に成功し、再び登山を継続できる事に。自分の体だけでなく、所持品の安全も厳しく判断したいところですね。余計な心労と疲労でしたが、大変良い勉強になりました。

 次のハプニングは、山梨県警山岳救助隊の救助活動。すれ違った下山者から聞いた話では、この先の道でトレイルランニング中の軽装登山客が転倒して額をざっくり切ったそうで、救助のヘリが来るため7ツ石山方面へ迂回してほしいとのこと。了解して歩みを進めると、拡声器で要救助者の氏名を連呼しながら低空で捜索中の山梨県警ヘリコプターを発見。決定的瞬間が撮れるかもと望遠コンデジを出してスタンバイ。要救助者を発見したヘリコプターは木々の直上でホバリングし、救助隊員がホイストケーブルで降下、応急処置が終わったのち再びホバリングして、要救助者をホイストで回収、病院へ搬送して行きました。ちょうど沸騰ワード10で海上自衛隊の救難活動を見たばかりで、まさか翌日に現場に遭遇するとは、まるで自分がハプニングを呼び寄せているような気がします。帰宅後山梨日日新聞に掲載された記事によると軽症だったそうで、また懲りずに走りに行くのでしょうね。ちなみに雲取山登山者の半数がトレイルランナーでした。動画はこちら

 最後のハプニングは、登山道脇の斜面にへばりついてトレッキングポールを差し出してる方を見つけたので話しかけてみると、どうやら私と同じようにサンダルが入った袋を滑落させたらしい。片方は彼の手を私が握って救出できましたが、もう片方は5m先で、なんの手がかりもない急斜面。諦めかけたその時(!)通りすがりの登山者が「ロープ出しましょか?」と申し出て下さいました。まるで南九州登山隊(活動休止中)リーダーを思わせる機敏な動作で、懸垂下降であっという間に救出!バリエーションルート(一般登山道以外の道)攻略がお好きだそうで、やはりロープは持ってた方が良いなと痛感させられました。ちなみに埼玉県警の救助隊員は、11mmの太さで50mを携帯しているそうです。

 さて、以上のハプニングがわずか1時間ほどの間に立て続けに起こり、疲れるどころかますますテンションが上がってきた旅路ですが、救助活動の妨げにならないよう迂回して、営業中の七ツ石小屋を目指しました。ここが雲取山登山の中間地点らしく、この旅で一番美味しかった湧き水を補給し放題だったので、ほぼ底を尽き掛けていた2Lのハイドレーションボトルを満杯に補給し、喉を癒す事ができました。ここで休憩中、救助者を保護してヘリへ届けた方が登ってきて、先生と呼ばれていた事から教師か医師と思われますが、ヘリの音に驚いた猪の家族が猪突猛進してきたと話していました。山小屋の従業員やベテランクライマーはだいたい第一保護者として遭難者を助ける事が暗黙の了解だそうで、今回も複数の登山者が毛布など養生道具を持ち寄って、あっという間に一時処置が行われたそうです。山を愛する人々のチームワーク、いいですね!続きはまた来週~