松島基地航空祭2022

朝8時にウェザー(天候調査)のF-2が上がったのが宿の窓から見えたので「おっやるんか?」と慌てたものの、その後は非常に厳しい状況が続いた。旧野蒜駅は津波の被害を受けたため現在は高台に移設されたものらしく、ホームから海岸線をのぞくと数キロはありそう。自然の猛威に慄きつつなかなか来ない電車を待ったが、ようやく来たかと思ったらラッシュ時の山手線並!押し屋に頼るわけにもいかず無理矢理体をねじこんで、矢本駅の臨時改札からタクシーへ。もちろん歩いてもよかったのだがせっかくチャージした体力と時間を無駄に使わないために今日はためらわない。海浜公園に近い運河まで乗車し、そこから堤防を歩くと、ブルーインパルス1番機が上空を旋回していた。改めて飛べる状況か確認するためであったが、雨は止んだものの雲が晴れず苦渋のフライトキャンセルに。その後F-2もタキシングのみだったが、救難のUH-60はひとり気を吐いて、悪天候こそ真骨頂とばかりに救難展示を完遂した。頼もしいかぎりである。

 このように飛行展示はほぼキャンセルのまま午前のプログラムが終了したため、フォロワーさん探しに堤防の奥まで歩いて行くと、大きく手を振って迎えて下さった方が!雨に濡れながら待機していた方は秋代淳一郎さんで、本名は某社の偉い方。出会いは2019年横浜御苗場のチャリティーオークションで、僕の作品を写真家のテラウチマサトさんと一緒に最初に選んで下さったご縁ながら、実は航空学生出身の飛行機マニア。同じ九州の福岡出身とのことで気が合いSNSで交流させて頂いていたのだが、久しぶりにお会いして話が尽きなかった。しばらく話を続けるうちに撤収の気配が増し、回復しない天気を前に僕も気持ちが萎えてしまったので、珍しく撤退を決意する。最後に黒澤英介さんのギャラリーに寄ると仰るのでご厚意に甘えて同乗させて頂いたが、松島基地の撮影スポットガイド付きで楽しいドライブに。大勇堂さんでお土産を買おうか一瞬迷いつつ駐車が厳しくて諦めたが、ギャラリーの売店で売っていた銘菓ブルーインパルスに爆笑!結局買う運命になっていたらしい。

 撤収前にはコンブルさんともお会いしたのだが、彼は前三沢基地F-16バイパーデモチームのメインパイロット”プリモ“ことジェイク・インペリゼリ大尉(現サンダ-バ-ズ所属)のお友達で、一緒に仙台ドライブを楽しんだほどのご関係。僕も御苗場はプリモの写真で脚光を浴びたためご縁を感じていた。ようやくお会いできてプレゼント交換なんかしちゃったが、フォロワーさんとのオンサイトは病みつきになってしまいそうな楽しさがあるな。そして秋代さんと訪れた東松島クラブハウスは旧野蒜駅の横で、震災遺構として駅舎とホーム、歪んだ線路が残されていた。津波の高さは10mなどと言われたが、その威力は何トンだったのだろう。我々が如何に小さな存在か思い知らされる。その一角に、まるで京都の茶室のような趣深い庭を抜けて Gallery 黒澤英介が建っていた。細いエントランスを抜けて最初に迎えるのは、B倍ほどの巨大な富士山とブルーインパルス!息を呑むとはこの事で、美しさももちろんだが、いつまでも見ていられるほどの完成度に、思わずため息が漏れる。被写体に追従する航空機からの空撮作品が多かったが、まるでパイロット本人の視界のような臨場感!(後日黒澤氏の生い立ちを紹介した動画を拝見して、左目を失明していらっしゃたことを知り絶句!天はハンディを克服した勇気にご褒美を与えるのだ)改めて空への憧れを掻き立てられつつ、お土産を買ってギャラリーを後に。秋代氏はそのまま高速で東京へ戻られるとの事で、最後に鹿妻駅まで送って頂き、T-2ブルーインパルスを撮ってお別れ。私も今から帰ればちょっと仙台で遊べるな〜と時刻表を見たところ、なんと次の電車まで1時間!快速が止まらない駅と来た時に学んだじゃないの!と珍しく時刻も調べずに鹿妻駅に着いたのには、実は大きな理由があったのである。

 仕方がないので休憩がてら撮り鉄を楽しみつつTwitterを更新してみると、なんと松島基地公式より「ブルーインパルスの飛行展示は14:00に開始します」とアナウンス!この天気で嘘やろと慌てたが、電車も来ずタクシーも拾えないとあっては、もはやここで撮るしかない。ならば井出隊長が愛したT-2ブルーインパルスと絡めて撮ることが僕の使命だと認識し、ちょうどフラフラとやって来た嗅覚が鋭い2名のカメラマンと、レシーバーを聴きながら展開を待つ。会場に向けて南から綺麗なデルタ形態で進入したブルーインパルスを目視した時の感動と言ったら!意地とか奇跡とかそういうものよりも、思いや願いの具現化と言った方が正しいだろうか。非常に難しい気象条件の中、雲をかいくぐって演技を行ったそうで、アクロデビューした和久井隊長の今日の決断は伝説になりそうな予感がする。5区分で始まった演目は最後にフェニックス、、、ロール!?、デルタ、、ループ?と2区分の縦系演目へと推移し、雲を突き抜けて「我ブルーインパルス、松島に在り!」と見せつけて演技は終了。何だろな〜、この達成感。我々もにこやかに「お疲れ様でしたっ!」と労って解散したのである。以下演目(5→2区分)

  1. デルタダーティーローパス
  2. リーダーズベネフィットローパス
  3. ポイントスターローパス
  4. ナイフエッジ
  5. チェンジオーバーターン
  6. フェニックスロール
  7. デルタループ

 天気予報を覆した例は以前訪れた2018年にも経験しており、この付近の天気は割と変化が激しいのだろう。日々の訓練で蓄積したデータと読み。やはりブルーインパルスは、松島で拝まなきゃ始まらない。期待に応えたブルーインパルスだけでなく、救難や21SQ、ブルーJrも頑張ってくれた。諦めて帰りかけた私を引き留めて下さったご縁もまた、思いがなせる技なのだろう。そして昨日購入したデルタループのTシャツも、この展開を予知していたのである。ありがたみを反芻しながら仙石線に揺られて仙台へ移動し、昨秋出会った東山で牛タンをリピート後ずんだシェイクでクールダウンしていると、はやぶさ・こまち連結を同時に3本見られて最後に大きなお土産ショット。E5系はやぶさへ初乗車したが、新幹線eきっぷならicカードをタッチするだけで在来線と同じように乗れたのには驚いた。大宮から八王子へ向かうむさしの号へ乗り換え、立川から青梅線へ。夜9時に帰宅してデータを移しつつ湯船に浸る。結局一度も使わなかった脚立と、20分しか使わなかった三脚。無くしたアンテナとレンズキャップも、思い出を形作るエッセンス。今回もこれだけ素敵な経験をさせて貰ったので、何か恩返しができれば良いなぁと思ったのだよ。。

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