- 活動日:2020/1/10
- 参加者:Joji Ikeda
- 目 的:自衛隊の災害支援活動調査
毎年行なわれている、鹿児島県鹿児島市に位置する桜島の防災訓練が50回の節目に当たる事から、国土交通省の主導により、陸海空自衛隊協力のもと、噴火警戒レベル5、5000名弱の全住民島外避難を想定した避難訓練が行われました。
市街地からわずか5km圏に位置する活火山として有名な桜島は、近年再び活発な様子で、噴煙や噴火が見られない日が珍しいほど。この日も朝から曇り空にうっすらと噴煙を吹き流す様子は、地元以外の方なら不安に感じたかも知れませんが、居住者にとっては日常的な光景。普段と違うのは、鹿児島本港に接岸されていた海上自衛隊呉基地所属の輸送艦くにさきが、私の乗船する桜島フェリーの出航と共に桜島へ進路を向けた事でしょうか。沖合でたまたま訓練で来鹿していたそうりゅう型潜水艦とすれ違い、まるで観艦式を彷彿とさせるような、自衛隊好きな筆者としては心躍る展開となりました。
早朝より島内各所で行政、警察、消防等機材や関係者が待機しているはずですが、全てを見学する余裕がないため、まずは手近な赤水港へ。海岸沿いに集落が点在し、避難を想定した街づくりが見受けられます。赤水港では消防車のみ確認できましたが、隣の野尻港は陸上自衛隊の救護車や海上自衛隊のゴムボート、隊員等でごった返しており、朝のミーティング中。このエリアでは土砂に埋まった車からの救出や、73式装甲車からAAV7水陸両用車への避難者引き渡しなどが行われるとあって、緊迫した雰囲気を味わえます。
このまま野尻港で見学したい所ですが、輸送艦くにさき搭載のエアクッション揚陸艇LCAC(エルキャック)体験搭乗に申し込んでいたため、現在は漁港になっている垂水旧港へ。手続きを終えて埠頭で待っていると、巨大なホバークラフトがゆっくりと進入してきました。50トンの戦車を一台搭載できる能力があるそうですが、今回は災害派遣仕様ということで、甲板には仮設の人員輸送ユニットを設置済。これを利用することで最大200名ほど運搬可能だそうですが、構造は小さな電車の車両、環境はステンレスの厨房のような感じで、頑丈ながら造りは簡素。薄暗いLEDランプが灯る中、シートベルトで体を固定して出航しましたが、外はほぼ見えず進行方向と逆向きに重力がかかるため、あまり快適とは言えません。騒音や振動も激しいですが、海上から砂浜へそのまま上陸できる乗り物は珍しく、貴重な機材である事は間違いないでしょう。
窓がないためどこを航行したのか全く分からないまま、30分ほどで元の桟橋へ。体験搭乗終了後に船体を見学できましたが、走行と浮上を担う巨大なプロペラやエンジンが見ものでした。乗員は5名だそうです。なお搭乗を待っている間に、海上自衛隊鹿屋航空基地のP-1哨戒機や、航空自衛隊新田原基地のF-15戦闘機による航空偵察、陸上自衛隊CH-47ヘリコプターに吊り下げられた九州電力の電源車などを確認できました。輸送艦くにさきは訓練後、沖合でAAV7とLCACを回収し、鹿児島本港へ帰還。鹿児島市内に展開していた陸上自衛隊の車輌を回収して、今回の訓練を終えました。
従来は島民が各自最寄りの避難港に集合して、フェリーや漁船で退避というルールだったそうですが、今回より集落を巡回する大型バスに乗車して、LCACなど大規模な輸送手段を用いて短時間で撤収するというルールに変更されたそう。いきなり大噴火した場合の避難は難しいかもしれませんが、ある程度予兆があり、全島民退避が見込まれた場合は、今回のような機材展開は十分に効力を発揮するのではないかと思われます。訓練に参加して、改めて防災意識について考えさせられました。