あおざくら 防衛大学校物語というマンガがある。防大は受験して不合格だったものの以前から愛読しており、密かに見学の機会を伺っていた。四年ぶりに防衛大学校の開校祭が一般公開されると知ったものの、当初岐阜基地航空祭へ出かけるつもりだったので諦めていたのだが、エアフェスタ浜松で岐阜基地テスター陣の機動飛行を見られたおかげで岐阜行きたい病が治癒したため、晴れて防大へ潜入する事を決意したのである。坂の上にあるので馬堀海岸駅からバス移動を推奨されたが、坂を歩いて登ることこそ聖地巡礼のキーポイントと認識し、浦賀駅まで車で移動して徒歩で登ってみた。軽く息を切らしつつ防大生気分に浸りながら30分ほどで正門へ到着すると、手作りのポスターやモニュメントが並び静かに興奮が高まる。手荷物検査を経て校内へ入り、たまたま立ち寄った物販テントを覗くと、なんと御前崎分屯基地のメインキャラクター「おまねこくん」ワッペンが売られているではないか!パッチ一枚に¥4000払うのも阿保だがメルカリで数万円払う奴も大概だなと呆れていたが、実物を目にすると財布の口は錠が爆発し自動ドアと化した。恐るべきおまねこくんの魅力に慄きつつ、次に先日訪問されたらしいあおざくら作者二階堂ヒカル氏のサインを本部庁舎で拝見して、めでたくご本尊の聖地巡礼が完了する。
マンガで予備知識があったのでまずは社交ダンス同好会であるアカシア会のダンスを見学。ヒラヒラの衣装で美しく踊るイケメン男女に魅了されたが、中身はバッキバキの軍人候補なのでカッコ良さが際立つ。目の保養を終えて講堂に入ると、今度は素っ裸の漢達が磨き上げたボディを披露して、こちらも熱気が溢れていた。少しだけ妖艶な雰囲気も覚えつつグラウンドの訓練展示を見に行くと、普通に駐屯地で見られるような敵陣潜入デモで楽しめた。爆破の硝煙に紛れて突撃する学生が頼もしくもあり、訓練のみで済むように祈らざるを得ない。食事が出遅れてしまい美味そうだったカレーが売り切れていたのだが、個性的なキッチンカーの中からワンプレートのチキン弁当に並んでみると、30分掛かったものの味は絶品だった。応援団の演舞を見ていると突然XのDMで八戸出身の現役学生さんから表敬の連絡を頂き、合流して色々取材する事ができたのである。最近の防大ライフは以前よりも過激な風習は減ったそうで、これも時代の成り行きだろうか。ただ意図的に理不尽を学べる貴重な機会なので、本質を知る姿勢は保って頂きたいものだと思った。
その後は儀仗隊や売店、各大隊の学生舎を見学したり、棒倒し直前の士気上げを撮影。あまりの迫力にこれは第一大隊が優勝するか?と期待して棒倒しを拝見したら、割とあっさり初戦で敗れてしまった。棒倒しは戦略面や戦術面などで実際の戦いと変わらない要素を多く含んでいるため、気合いだけでは足りないことを学べたのであろう。今回特に目を引いたのは、パフォーマンス集団の4大隊TSO!いわゆるパントマイムなのだが、鍛え上げた体幹を武器に笑いを全力で取りに行く姿勢に感動した。もちろんこれは音声通信が途絶えた時や言語で意思疎通できない場合のハンドサインやジェスチャーの練習であり、とにかくやる事なす事全てが、軍人としてのスキル向上に繋がっていることを確信できたのである。自分も防大に受かっていればこんな生活を送ったんだなと感傷に浸りつつ、ダッシュで浦賀駅まで走り、車で東京湾フェリーに乗船。最終目的地の九州ラーメン友理へ辿り着き無事に長崎ちゃんぽん大盛りを頂いた。成田空港でフライングホヌを撮影後、道の駅発酵の里こうざきに車中泊して、明日の訪問に備えたのであった。