さる2021年3月31日に東京都内11ヶ所の上空で、エアレース・エアロバティックパイロットの室屋義秀さんが、飛行機から排出するスモークで巨大なニコちゃんマークを描きました。福島スカイパークを拠点に国内外で活躍する室屋さんは、空を見上げて少しでも気持ちが明るくなって貰えればという思いから、各地でこのような慰問フライトを企画しております。過去に福島、山形、静岡、宮城、栃木と実施して多くの方が空を見上げて笑顔が生まれましたが、今回は首都東京。ご存知の通り成田・羽田の二大国際空港の存在はもとより、米軍に自衛隊に民間機など網目のように航路が行き交う超過密空域。新型コロナウイルスで便数が激減している今だからこそ、実現に至ったのかもしれません。
それでも緊急事態宣言の延長から延期を余儀なくされましたが、年度末ギリギリで青空の下、フライト実施に至りました。12:05に東京スカイツリー、12:09に葛西、12:14東京タワー、12:20高井戸、12:25後楽園、12:31二子玉川、12:36荻窪、12:41渋谷・原宿、12:46調布、12:51八王子、12:59羽村駅のルートで、直径1km、45〜60秒の間に巨大なニコちゃんマークを描画。中心から約10km圏内であれば見られるような設定だったそうですが、ほとんど遅れもなく全てのポイントで描画して福島まで戻るとは、伊達に2017年Redbullエアレース年間総合優勝を獲ってませんね。遮る建物がなければ、ほぼ都内全域で観測できたように思います。
さて私はガッツリ勤務中ではありましたが、昼食時間中に1分間空を見上げることは特に問題ないであろうと解釈し、二件目の現場移動を遠回りして八王子駅前でスタンバイ。視界が広いのは羽村だろうと思いましたが、流石に仕事に間に合わないのはまずいので、八王子駅前交差点の桜の木の下に陣取りました。Twitterで進捗状況を確認しながら天頂をキョロキョロ見回していると、予想と90度ズレた方角にスマイルの縁を確認!あらかじめシミュレーションしたように、まずは4K動画を撮影して、描画が完了したら桜を入れた広角、最後に画角いっぱいの望遠を押さえて撮影ミッション・コンプリート!興奮を静かに抑えつつきちんと仕事できた事は、航空祭慣れの賜物かもしれませんね。
噂を聞きつけた数十名の観客も笑顔で指差し、楽しんでいました。室屋さんも現場でどの程度の遊び(キャパシティ)があったのかは分かりませんが、しっかりと青空を背に都心へ向けて描画していたのが印象的。まさに空をキャンバスになぞらえたアーティストでした。このような、見えざる敵であるウイルスに怯える時代、もはや人類一人一人がベストを尽くして、前を向くしか希望は残されていないように思います。彼にしかできない今回のイベントは、最大の効果を生んだ事でしょう。辛くても厳しくても、とりあえず空を見上げて、この素敵なスマイルを思い出したいものです。