Veer Guardian 2023 Final

今年初の航空関連イベントとして1月27日まで行われた、日印空軍合同訓練ヴィーア・ガーディアン2023。振り返ってみると当初マニア的に予想していた訓練内容は、はるばる遠征してきたインド空軍Su30MKIフランカーを迎え撃つ航空自衛隊の精鋭アグレッサーF15と3SQのF2で、柔道の乱取りに相当するような激しいドッグファイトを朝から晩まで繰り広げると思いきや、とにかく!フランカーが!飛ばないっ!(笑)。フランカーは経由地のフィリピンから1月10日に百里基地へ着陸し、再び飛んだのは1月18日。それもあくまで慣熟飛行の如く、F2のエスコートで緩やかに旋回する感じ。一般的なハイレートクライムに相当する、離陸後の上昇角度を高くした機動に至っては、空自の機材は目一杯助走しアフターバーナーを炊いて垂直に近い勢いで急上昇するのに対し、極めて短い滑走距離とガスコンロのように青く光るアフターバーナーらしきものを炊いて、カナード(補助翼)を含む巨大な体躯が受ける揚力にモノを言わせて、もっさりと上がる。うーむ流石に東側の戦闘機は、運用コンセプトがよく分からないなと不思議なものを見つめる思いで、タイムラインから流れてくる動画を観察した。

 翌週に至っては天候不良も祟ってか空自機と並べて記念撮影ばかり行い、氷点下の車中泊続きで疲弊したマニアの心を折るナマステガチャ!コックピットのカバーを外したり閉じたりを繰り返す様は、まるでカーリー神の誘惑の如く期待の底なし沼に誘う。この週も全く飛翔することのないまま訓練最終日を迎えた1月27日、まるで潮が引くように、多くのマニアが涙を飲んで聖地を後にしたのであった。私に至っては繁忙期真っ盛りで追加で有給が取得できるはずもなく、前回の撮影でキッパリ諦めていたのだが、一縷の望みとしては、空自のローカルに水を差さないために、トラフィックの少ない土曜日まで帰還を持ち越すのではないかという、読み。まぁここまで読み切った時点で引き寄せられるのが最近の私であり、予測通り、金曜日に帰還しなかったことが判明したのである。

 そうは言っても今週末はガッツリ経理処理をしないと納税に支障をきたす有様で、加えて仕事は残業が発生。さらに19時から別件のミーティングを済ませると、落ち着いたのは深夜零時!これから百里展開はなかなかシビアだと感覚で分かっちゃいるが、筋金入りのマニアとしては千載一遇のチャンスを逃すはずもない。疲労のピークを覚えたので1時間だけ仮眠し、1時間で準備して出発。守谷PAで休憩し朝の4時半にはお馴染みアラハン前駐車場へ到着。例の電気毛布を使って少しだけ追い眠もできた。後は期待通り、タイガー(フランカーのコールサイン)が巣に帰る瞬間を待つのみである。

 夜明けとともに起床し、夜中に場所取りで置いたアルミの伸縮脚立を確認したところ凍って伸びなくなってしまったのに気づき、焦ってカイロや電気毛布で温めても焼け石に水。結局日が昇って2時間ほど放置することでようやく解氷に成功し、脚立を伸ばすことができた。帰宅した翌朝に高圧洗浄機で脚立や車、自転車を洗ったのだが、やはり道具のメンテは命(と撮れ高)に直結すると認識し反省。一安心し、とりあえずカメラを担いで自転車で茨城空港公園へ行ってみると、支援機のC17グローブマスターⅢ輸送機には物資を搬入し、フランカーのコックピットが開放している様子をようやく拝めた。トラブルがない限り彼らは、今日の午前中にフィリピンへ向けて旅立つだろう。それだけ確認してアラハン前へ戻ると、朝9時にまず1機目のC17が、スカイマークの着陸を待ってゆっくりと離陸した。ここで気づいたのが、今日は南風運用のためランウェイ21上がりだということ。続くスカイマークはなぜか03から上がったことを踏まえて熟考した挙句、最後のナマステガチャは先ほど解放されたと知った空港の臨時駐車場へ賭ける事に。あそこならフランカーの足の早い離陸であっても、お別れ記念ローパスを期待して、いい感じの側面上がりが撮れるのではないだろうか?

 テキパキと脚立と自転車を収納し車を慎重に走らせていると、無線でクリアランス(飛行機がこれからどこへ向かって飛びますよ〜という申請)を知り、興奮が収まらない。完全に諦めていたフランカーの機動を、今日撮れるかもしれない。前回のユーロファイターに続くお宝ゲットである。今年最大の瞬間がまだ一月なのにキてる!というか今年のスタートダッシュはいろんな意味でえげつない。ワクワクが止まらない躍動感である。さて、大勢の自衛隊員の見送りを受けつつ、一機づつゆっくりとエプロン(駐機場)からタクシーウェイ(誘導路)へ。スカイマークの着陸を待って、Runway21L cleared for takeoff!管制の離陸許可を受けて、素直で優雅な右肩上がりの軌道で、空へ還っていった。完全に逆光ではあったが、最後までミステリアスな飛行機。今回語り合えたことは大きな経験になった事だろう。そしてハイライトは、空中で集合した4機が広大なビッグデルタ・フォーメーションを組んで、大きな感謝を込めつつ我々の頭上をローパスしたこと!な、な、なんじゃコレ!全てのカルマを洗い流す、浄化フライト。ここに居ること自体が奇跡的というか、撮れた写真を眺めながら、一旦は完全に諦めて、感謝で成果を頂いたこと。本当は動いている瞬間を撮りたかったこと。可能性を信じて寝ずに駆けつけたことで、大きな成果を引き寄せたのである。ヤバくないですか?極め付けは帰り際、スカイマークのラッキー・イエロー!ピカチュウジェット1号機をゲットだぜ?気分良くそらの駅そ・ら・らにて常陸牛ローストビーフ丼とミックスソフトクリームで祝杯を上げました。

 あくまでいちマニアとしては大きな収穫を得られたのであるが、外交としての軍事交流はしっかりと打算があって、空自にとっては仮想敵国主要機の運動性能を解析できる代わりに、インドにとっては将来的に敵対するかもしれない国のF15、F16派生型をじっくり観察させ、インド大使館に隣接するインド料理店ムンバイのケータリングまで提供したのだから、つまりは日本が金と情報を払ってインドを「接待」した訳である。種を蒔いたのは故人となってしまった安倍元総理であるが、岸田総理なりに約束を果たしたのであろう。国交を舐めてはいけない。お互い肚の探り合いで、国益に繋げる綱引き、駆け引きの集大成。税金で行われた接待を我々の鋭い視点で監視し、更にフランス(ラファール)やスウェーデン(グリペン)の訓練を誘致してもらえるなら、喜んで税金を納めようと思うものである(オチ)。なお後日発売されたムンバイカーTシャツをゲットした。。