アラハンコンパ7th

  • 活動日:2020/10/03
  • 参加者:Joji Ikeda,Kazuto Goto,Chihiro Yasuda
  • 目 的:アルパイン体験およびドローン撮影

アラハンコンパ7thは、南さつま市の九州百名山「磯間嶽」。岳じゃなく「嶽」と呼ぶあたり嫌な予感しか浮かばなかったですが、やはり気分が乗らなかったのでしょうか、事前に様々な失敗をやらかします。給油を忘れて集合場所へたどり着けなかったり、伝家の宝刀GRⅢを忘れたり。極め付けは自宅から最短コースでナビに誘導させたところ、大嫌いな県道291号に乗ってしまい、闇の中細い林道をタヌキを避けながら、10kmあまりを40km以下で走らされた事。2時間睡眠と相まって到着時すでに疲労困憊という、マイナスからのスタートとなりました。

 朝6時に道の駅きんぽう木花館で女性メンバーと合流し、燃料不足のため車に同乗させて頂いて林道入口へ。二台しか止められない岩稜コース駐車場で、これまた寝不足のリーダーと合流し、7時に出発しました。今回は標高400m弱の低山で、ネットのコースタイム調査でも3時間。さすがに午後早めには下山できるだろうと甘い予測を立てておりましたが、この予測がガトー・ショコラ並に甘かったことを先にお伝えしておきます。石炭山ドローン捜索を超える壮大な登山紀行、始まり始まり。

 スタートは小さな渓流に沿った、勾配の緩やかな林道をガシガシ歩きます。先の台風の影響か倒木や落石が多く、蜘蛛の巣も避けながら30分ほど歩き、ちょうど日が差し始めた頃に登山口へ到着。林道の終着点左脇の崖にはロープと梯子が設置され、いきなり直登とも取れそうな急傾斜の登山道が現れるのですが、気分が上がるというよりは、これからの困難を案じて深いため息。ストックを仕舞い一息付いてから、いきなり三点支持で登り始めました。

 傾斜きつめの登山道をしばらく登ると、岩稜コースという名前を裏付ける巨大な岩盤が立ち塞がります。何でも10ヶ所ものロープ直登スポットがあるそうで、まさに10回ほど臨死体験を得られそうなありがたい?アトラクション。リーダーは歓喜でニヤニヤが止まりませんが、私と女性メンバーは落ち込むばかり。ニヤニヤしながら「ロープ使う?w」と問われますが、いやー、知らんがなとしか思えませんでした。とりあえず5mほどの崖を、足場と手掛かりを慎重に模索しながら、ロッククライミングの要領で恐る恐る登ってみました。

 振り返ってみると頑丈な岩盤ばかりで、作り付けのボルダリング施設の如く、しっかりした足場や手がかりが適度な場所にあったので、思ったよりサクッと登れてしまいました。注意点としては、降雨後は滑るので行くべきでない点と、重心を保ち、しっかり三点支持を心がける事。眼下は茂みに覆われて高度感を感じなかったのも助けになったので、高所恐怖症を克服する練習には打って付けと言えましょう。何より登った後の爽快感は、登れた人にしか体験できません。自分で自分を褒めてあげたくなります。

 このようにハードな崖登りがしばらく続きますが、徐々に岩のサイズや傾斜などの難易度が上がる感じなので、跳び箱の段数を増やすが如く、少しづつ体に馴染ませる事ができます。無理無理!という思い込みから「イケる、かな?」というチャレンジシップに変わり、ひと山超えるたびに自分の経験値が上がる感覚。最終的には、みんな登ってるんだから自分も何とかなるだろうという根拠のない自信に進化して、気がつけば頂から見下ろす自分がいました。登山の面白さの醍醐味ですね。岩盤の硬さが支える安心感には、大いに助けられました。

 岩稜以外の登山道も噂に違わぬ上級レベルで、狭くて窮屈な箇所多数。岩を迂回する巻き道もいくつか行ってみましたが、ロープ伝いのトラバース(斜行)が中心で危険度はあまり変わりませんでした。踏ん張るシーンが多く体力を使うので行動食や水分補給が欠かせませんが、季節外れの残暑に苦しめられつつも、水2Lとアクエリアス1Lで余裕あり。ただ調理用水も見込んでおりましたが調理に使えるほどの水は残らなかったので、ガスコンロとガス、調理器具とフリーズドライ食料の携行は無意味でした。腐らない程度の調理済み食料の方が消費でザックが軽くなるので、普通におにぎりとかで良いような気がしますね。

 今回は中嶽を過ぎてしばらく歩いた木陰の脇道で、14時に遅めのランチ。主食の巻き寿司(半額で¥100!)がカットされてなくて笑いましたが、時期外れの恵方巻きは美味かった!他に魚肉ソーセージと、お裾分け頂いた金のウインナー。やはり火を通したメニューが一品あれば嗅覚でも温度でも食事を楽しめるので、この辺は課題ですね。寒くなれば余計に必要となるでしょう。そして帰宅後そっとJETBOIL(クライマー必携超小型湯沸かしキット)をポチりました。

大将の磯間嶽登頂を眼前に控えて、立ちはだかるのは高さ10mほどの副将級。頂上はなだらかで俗にテーブル岩と呼ばれているそうですが、ロープもなく、一般的には巻き道を選択するべき場所。そそくさと巻こうと歩き出したら、リーダーがさっさと登頂して、伝家の宝刀30mロープを下ろして下さいました。実はここに至る手前の岩で、ダブルエイトノットを始めとするロープワーク実践講座を披露して頂いたので、この日のために購入したハーネスとロープを接続して何とか登はん。一人では絶対に挑戦しないであろう難所でしたが、ぴんと張りを保つロープの支えは効果絶大で、滑落から意識を逸らし、クライミングに集中できます。私に続いて女性メンバーも何とか登り切って歓声を上げたのも束の間、降りる側もエグい事が分かってしまい、リーダーはビレイ(安全確保)の疲労で倒れ込んでしまいました。

 リーダーがダウンしちゃったので、暇潰しのドローン撮影に挑戦。ここなら視界360度見渡せるので、いつもの機体ロストは避けられそう。風が収まった状態を見計らって、透き通った湖面のように穏やかな空を、あめんぼうが滑るように、磯間嶽の荒々しい稜線を目指します。直線距離ですら意外に遠く、歩けばもう1時間くらいは掛かりそうでしたが、ドローンは数分で頂上を俯瞰して戻って来ました。遠くアゼルバイジャンでは、自爆ドローンが無惨に生命を奪って行く時代。人の志は、同じ機械を遊具にも殺戮マシーンにも変えてしまう。少なくとも日本ではまだ、働き盛りの我々が武器を取る事なく、余暇を楽しめている。これで幸せが足りないなどと言っていたら、バチが当たりそう。はるか遠くの惨状も心に留めて、平和を祈るしかない。

 日も傾き、リーダーも復活したところで、懸垂下降の準備に掛かって下さいました。まずは女性メンバーが、120cmスリングで作った簡易ハーネスにカラビナとロープを結び、リーダーがビレイヤーとしてロープをコントロールするロアーダウンという方法で、10mほどの垂直の崖を降りて行きました。最悪両手両足離してもロープにぶら下がるだけですが、体が接地してない状態の怖さは計り知れないので、極力三点支持で少しづつ降りて行きます。無事に着地したので、次は私の出番。調達しておいた確保器を使って、懸垂下降という、ロープを2本使って自分で下降ペースを調節する方法を実施。事前に勾配の緩やかな場所で、ビレイ装備のプルージックと確保器からロープを緩めるタイミングを覚え、意を決して薄暗がりの森の底目掛けて飛び出します。

 恐怖が云々というよりは、ここでもロープへの安心感が勝って、後は手足を動かすリズムだけ意識してポンポンと降りてみました。まさか自分が消防や自衛隊の訓練で見た壁下りをやる事になるとは思いませんでしたが、これは簡単で楽しかった!準備時間さえ短縮できれば、断崖絶壁をあっという間に降りられる奇跡の手段ですね。最後にリーダーがロープをセルフビレイして華麗に着地し、ようやく先に進める事になりましたが、ここでリーダーより重大発表が!

 「・・・日没も近いので、磯間嶽登頂を断念し、最寄りのルートで下山最優先に切り替えます」そう、いつのまにか前回に引き続き、タイムアップとなってしまったのです。休憩や遊びは控えたつもりでしたが、ネットで調べたコースタイムが当てにならず、予想外の高温による疲労、リーダーの飲料水枯渇etc.。なんだか今までとさほど変わらない言い訳ですが、読みが甘すぎたという事でしょうか。磯間嶽頂上まで残り五分の取り付きから鎖場を見上げて、泣く泣く上津貫登山口方面へ最短下山を開始。すでに足下が薄暗い森の中を、あまり踏み固められていない落ち葉に足を取られながら、駆け降りるかのようにさっさと降りて、ほんの20分ほどで県道沿いの登山口まで降りる事ができました。

 まだ18:20にも関わらず辺りは真っ暗で記念撮影すら諦めましたが、全く人気のない山奥にも関わらず、下山数分後にヘッドライトの明かりが!実は昼に磯間嶽にいる事をSNSに投稿したら、近くにお住まいの写真仲間からレスが来ていました。リーダーが方針転換した時点では、下山後は歩きかタクシーで駐車場まで戻るつもりでしたが、ダメ元で送迎をお願いしてみようとメッセージを送ったところ快諾して頂き、下山後に現在地の座標を送る流れになっていたのです。さて座標を送ろうとしたら冗談のように圏外で、焦りつつも明かりの差す方角に精一杯高く掲げた結果、辛うじて送信に成功!速やかにレスキューと合流する事ができたのです。

 もし歩くとすれば、山のちょうど反対側までの迂回となり、実に6kmもの長丁場!写真仲間H氏のお陰で、数分でリカバリーする事ができました。タクシーを手配したとしても現在地を説明する手段がなく、奇跡の最善手が功を奏した結果に。H氏とは古くからの知り合いとはいえ、実際にお会いしたのはこれが2回目という有様でしたが、間違えて逆回りに誘導した結果、闇の中15kmほども走って頂く事に。道中は積もる話で盛り上がり、登山の疲労を忘れてしまうほど楽しかったですが、突然かつ不躾な申し出にも関わらず、快くレスキューを引き受けて頂いたH氏に、メンバーを代表して深く御礼申し上げます。ありがとうございました!(H氏の職場:前田鮮魚店

 解散後は通称小湊ジョイフルと呼ばれる阿久根商店自販機コーナーで、¥380に値上げした天ぷらうどんを実食。相変わらず湯切れが甘く薄まった感じの出汁でしたが、下山後は口に入るものなら何でもご馳走なのは言うまでもない。道の駅きんぽう木花館で女性メンバーと解散し、ちょうど金峰山の稜線に躍り出た満月を撮影していたところ駐車場で別れたリーダーが偶然やって来たので、ちょっとだけ反省会。今回は登頂も失敗し無関係な友人をも巻き込んでしまったという事で、ズバリ遭難アウトという認識を共有しました。私達にできることは、精度の高い計画と完遂を目指し、日々トレーニングや調査、効率を追求したギア選別に励むのみ!ご迷惑をおかけしたH氏は南さつま市で前田鮮魚店という仕出し・小売業を営んでいらっしゃるので、いずれ御礼参りに出向きたいと思います。いろいろありましたが、ヤバイです。クライミングが、楽しいの。。

■おまけ:登山直前に調達したもの

  • リンクパーソナルアンカーシステム
  • 確保器(PETZL D17AAルベルソ)
  • ハーネス(blackdiamond moment4s)
  • ザック(DEATUR FUTURA PRO 40L)

■下山直後に調達したもの

  • 湯沸かし器(JETBOIL MICROMO)
  • 超小型三脚(leofoto MT-03)

■今後調達すべきもの

  • ヘルメット
  • ロープ