ゴールデンウィーク初日の4月29日は、千葉県の下志津駐屯地創設記念行事に行くつもりだった。陸自の高射学校が併設され、地対空装備勢揃いの魅力ある内容が期待されていたが、連休前の影響か仕事が超絶忙しく、最近の岩国FDから厚木、横須賀展開で週末も含めて休養を取る暇がなかった。船橋のちょい先とは言え、パソコン新調の影響で遠征費用が乏しく、電車や高速道路すら使い難い状態。疲労も蓄積し遠出自体が億劫になったため遠征を断念。代わりに金曜日に岩国基地から飛来したアメリカ海兵隊VMFA-115”Silver Eagles”(コールサイン:Blade)が飛ぶかもしれないとの事で、先週春祭りで訪れたばかりの厚木基地へ再び出かける事にしたのである。
風向きを考えると北側の方が撮れ高が見込めそうだったが、とりあえず基地内の様子を確認するためいつもの大和ゆとりの森駐車場へ。朝8時にも関わらず満車に近い状態であったが、子供達のサッカーの試合が行われておりその影響だったかもしれない。昨夜の雨のおかげで富士山がクッキリと確認でき、距離の近さを実感する。そしてF/A-18ホーネット戦闘攻撃機目当てであろうマニアが約100名ほど集まっていて、これは飛ぶ可能性が高いのだろうと理解した。強い南風は涼しいが機体の周囲は陽炎でぼやけており、ひょっとしたら暖気運転が始まっているのかもしれないと期待を抱きつつ動きを注視していると、無線でクリアランスが入った頃に超望遠を担いだディープマニアが数名、西側へ徒歩移動を始めたのである。
ゆとりの森はほぼ滑走路延長上のため、ここで撮ってもお腹しか拝めないだろうなと気付いていたが、マニアを追跡してみると公園を出て滑走路脇の細い農道を100mほど北上し、あわよくば捻りを撮れるかもしれない理想的な場所へ辿り着いた。そしてそこにも100名以上のマニアが詰めかけていて脚立を置く場所すら無さそうだったが、ちょっとした窪地の2列目から踏み台に登る事で撮影スポットを確保。無線の離陸許可を確認して、機体が浮いてくるであろうあたりを凝視。ハイレートクライムまでは行かないまでも比較的高い高度でまず複座機が飛び出し、次にお目当ての単座。尾翼にアメリカ国旗を描いた司令官指定機がゆっくりと飛び去って行ったのである。無論落ち着いてAF動体予測モード、マニュアル露出で画角に捉えつつシャッターを切ったのだが、夢にまで見た青空でのCAG機に、しばし恍惚感。そして岩国の荒天を我慢した報いは今日だったかと、歓喜の興奮に変わった。ピントもガッチリ決まった。これは代表作の1枚になる。
実際は撮り終えた直後に民族大移動と呼ばれる、反対側のエンドへひた走る現象が発生し、私も駆け足でキャリーケースを引きつつ車へ戻って、念の為に持参した艦載機、ではなく折り畳み自転車を引き出して、水と望遠レンズだけ持ってトライアスロンの如く漕ぎ出した。エンドまで6kmほどだが30分ほどかかるらしく、外柵沿いを北に向かって漕ぎに漕いで、ようやくランウェイ19エンドに到着後10分ほどで機体が着陸してきたのだが、その前に海軍のP-8Aポセイドン対潜哨戒機が降りてきた。望遠単焦点しか持参せず引きとドアップしか撮れなかったが、その後に続いたホーネット2機はガッチリ確保。再び南エンドへ向かって爆進を開始し、途中のコンビニで横須賀海軍カレーを買って車の中で食べていると、なんと無線で2回目のクリアランスを聞いてしまう。
まさかインターバルなしで上がるとは思わず、慌てて上がりを撮った場所へ自転車を走らせたが、滑走路延長上で離陸滑走を始めてしまった。とりあえず落ち着いて望遠をセットし、なんとかお腹を押さえたが、これはこれでバリエーションとして良い収穫。そのまま半べそで再び北へ走って降りを撮り、また南へ戻って岩国への帰投を撮影。結局この日24kmも全力で漕いだため、最後にはふくらはぎが攣りかけたのだが、憧れのホーネットをガチピンで撮影できた収穫はとても大きく、常に半笑いの阿呆面を晒していた。もうゴールデンウィークはクールダウンで良いなぁと。朝の方針転換が成功した事に深い感慨を抱きつつ、2時間掛けて帰宅。今日も奇跡的な夢が実現したのである。
翌週の5月6日もローカルフライトを行うという情報を仕入れて再びトライ。学習の効果もあって自転車での移動も他のマニアの自転車を追走する事で最短距離を編み出し、無事に2回の上がりと降りをゲット。色付きではなかった事もあったが厚木はどうしても構図が限られるためやや飽きてしまい、無線でステイを知ったため昼過ぎに退散。更に翌週も色付きが訪れたそうだが、荒天と疲労のため展開を断念した。本年度でレガシーホーネットは引退しF-35Cに機種更新されるとのこと。元祖マルチロール・ファイターの勇姿をたっぷり拝めて良かった。