JCGクルーズ2025

海上保安庁第十管区海上保安本部が主催するJCGクルーズ2025が11月8日に開催された。東京拠点が長く近況を把握していなかったが、コロナ禍の自粛などを経て不定期開催だったそうで、今回は2023年に続き2年ぶりとのこと。たまたま開催を知り家族分の体験クルーズ乗船券を申し込み幸運にも1200人分の3名に当選したものの、一番連れて行きたかった息子は土曜授業で参加できず、妻と二人での参加となった。私は普段種子島の社宅に居住しているが、このクルーズの為に前日の夕方、本土へ戻ってきたのである。

集合場所の鹿児島本港北ふ頭は自宅から歩いて40分ほどの距離だが、妻がバスで行こうと言うので甘えてしまう。鹿児島中央駅経由かごしま水族館行きという利便性の高い路線に20分ほど揺られて、受付開始の30分前に到着。近くのマクドナルドでモーニングコーヒーを楽しみつつ、高校受験を控えた息子の進路について話し合った。早朝ながら桜島の競技場へ渡る学生で賑やかな店内だったが、込み入った話をする環境としてはほどよいノイズが逆に効果的で、認識を共有できたのがよかった。

岸壁に到着すると港湾作業を担う日本通運の建屋に誘導されて、まずは乗船券に記されたQRコードを提示して入館。身分証明書による本人確認は行われなかったが、人数さえ合致すれば随伴者が異なっても登録できたらしい。続いて手荷物検査や金属探知機によるボディチェックなど米軍基地並の厳しいチェックを経て、接岸している最新式の大型巡視船PLH43あさなぎに乗船した。後部甲板にはびっしりと椅子が敷き詰められて、ヘリコプターが2機入る格納庫には甲南高校の吹奏楽団がスタンバイ。出入りしやすい端っこの席を確保してさっそく撮影を開始したが、沖止めしていた海上自衛隊のおやしお型潜水艦は、残念ながらクルーズ開始直前に帰途に就いてしまった。

天候は雲一つない快晴で、海上保安庁の公式キャラクター「うみまる」も登場し甲板を盛り上げる。1日船長に任命された中学生の出港準備号令でタラップ格納などの準備が始まる。タグボートが一隻近づいてきたが強力なバウスラスターにより単独で離岸できたため、出番は訪れることなく10:00に出航。眼前に美しくそびえ立つ桜島を横目に、訓練展示会場である七ツ島運航支援センター沖へ向かった。まずは海保最大級の巡視船PLH33れいめいが放水銃のアーチでお出迎え。朝陽を受けて虹が浮かび上がり、背後を至近距離で種子屋久高速船の水中翼船トッピーが浮上航過した。垂水フェリーの航路上を通過するため、タイムスケジュールもシビアな見積もりだったことだろう。

続いて本日観閲に参加する巡視船や巡視艇、航空機が縦列で反航し、そのまま位置についた巡視船おおすみへ向かってスーパーピューマ225あおわしが飛来。甲板で待ち構える要救助者を着地せずに空中で収納する吊り上げ救助訓練展示が始まる。まずはウエイトを取り付けたホイストケーブルを甲板へ垂らし、機動救難隊員2名が懸垂下降。1名が要救助者と共に収容され、残りの1名も収容し数分で訓練展示が終了。無風に近い絶好のコンディションとは言え空中の1点にピタリと静止し続ける操縦技術が素晴らしかった。

次は不審船を模した小型巡視艇とゴムボート2隻による規制訓練展示。停船警告を無視して逃げ回る不審船を強制的に停船させるため船体に接近したり進路に割り込んだりを繰り返し、相手が応じないと高速で並走しながら船体を2隻で挟み込み、盾を構えた特別警備隊員が不審船に突入して乗組員を徒手空拳で制圧した。今回は相手が刃物や銃器で応戦しない想定だったが、海上保安資料館横浜館で視聴した北朝鮮由来と思われる不審船と巡視船あまみとの応酬は戦闘に相当する苛烈さで、相手が死に物狂いで抵抗したら自爆も含めて何をするか分からないため、冷静かつ的確に相手の抵抗意欲を削ぐ取り組みが必要なのだろうと察した。

最後は再び参加船艇が乗員の敬礼で通過したが、甲板では恒例のダンスパフォーマンスが繰り広げられ、ヒーローショウやアルゴリズム体操、鹿児島おはら節などで盛り上げた。午後の部はなんと金子国交相と瀬口海保長官が座乗され、文字通り観閲式だったのだそう。この日は全国各地で海保のイベントが行われたそうだが、鹿児島湾外の大隅海峡は交通の要所であり、相応のテコ入れとしてこのように豪華な陣容となったのだろうか。瀬どりや密輸、密航・密漁に領海問題まで守備範囲が広いが、洋上の警察、消防、救急を一手に引き受ける海上保安庁を応援したい。

参加船艇
種 別型 式所 属
巡視船PLH33
れいめい
鹿児島
海上保安部
巡視船PLH43
あさなぎ
鹿児島
海上保安部
巡視船PL202
おおすみ
鹿児島
海上保安部
巡視船PL69
こしき
鹿児島
海上保安部
巡視艇CL01
さつかぜ
鹿児島
海上保安部
巡視艇PC101
あそぎり
天草
海上保安所
測量船HS32
さくらひびき
第十管区
海上保安本部
監視
取締艇
たいたん指宿
海上保安所
大型
監視艇
なんせい長崎税関
複合艇PL67-M2奄美
海上保安部
複合艇PL69-M2鹿児島
海上保安部
回転翼機MH696
あおわし
鹿児島
航空基地
回転翼機MH976
まなづる
鹿児島
航空基地
固定翼機MA542
うみつばめ
鹿児島
航空基地