さよなら花電車

毎年11月3日は晴れの特異日という事で、統計的に雨が降らない確率が一年で一番高いと言われておりましたが、19年前のこの日に行われた私たち夫婦の結婚披露宴は、昨今のハリケーンを予測するかの如く、珍しい土砂降りでした(チーン)

 ネタ振りはさておき、11月3日文化の日には、鹿児島市中心部の市電軌道敷沿いでおはら祭が開催されます。2日の前夜祭と3日の午前・午後の総踊りで、数十万人の人出が見込まれる南九州最大のお祭りですが、今年は新型コロナウイルスの影響で開催が危ぶまれました。総踊りは3日の午前中のみ、パレードなど混雑を引き起こすイベントは全て中止、道路一車線分に張り出して観覧エリアを設け、入口で検温とアルコール消毒、スタンプカードを配布し、エリア内の人数管理を行うなど徹底した感染対策を準備して、時期尚早との声を退けて開催に漕ぎ着けます。出入口を無視して柵を超えたり、目安15分と案内された滞在時間も強制力は持たないなどいろいろ課題が散見されましたが、お祭りwithコロナの試金石として貴重なシミュレーションになった事でしょう。

 来年は70回記念で、祭りを告知する花電車が新調される事から、これまで走ってきた花電車が引退する事になりました。花2号という登録名の20形電車は、なんと製造が明治時代の1911年!福岡の西日本鉄道で営業運行した後、どんたくをPRする花電車に改造されたそうですが、1979年の鹿児島市電50周年を期に鹿児島市交通局が譲り受け、40年以上にわたりおはら祭をPRしてきたそう。先輩の花1号が2013年に廃車となり、ついに花2号も引退する事になりました。

 そこまで電車に興味がある訳ではないですが、最後とか記念とかの冠にはすこぶる弱いヒトなので、11月3日の08:30に鹿児島市上荒田町の交通局へ。すでにカメラを構えたマニアや子供連れのお母さんなどで賑わい、先頭でビデオを構えたオジさんは何と東京からいらっしゃったそうですが、私も08:45発の最終便に釘付け。今回の計画はバイクで帯同し、先回りしていくつかのポイントを押さえる予定。事故らない程度にまったりと、最後のツーリングを楽しむつもりでした。

 出発待機中の花2号を撮影後すぐ横断歩道をダッシュして、新市立病院と桜島が入る構図でパシャリ。バイクで鹿児島中央駅に先回りし、人数が増えたばかりの若き薩摩の群像やアミュプラザ屋上の観覧車とパシャリ。高見橋近辺や大門口通り、天文館と山形屋は外せない。みなと大通り公園で市役所旧庁舎をバックに、赤星パーキング前では城山バック。終点の鹿児島駅電停が工事中のため、折り返しの桜島桟橋通電停では連結車両ユートラムとの2ショットや新鹿児島駅舎とパチリ。まるでローマの休日のような、濃厚デートを楽しみました。

 09:30に踊り連が練り歩く道路は歩行者天国になるので一般車両は締め出されますが、その1分前に対象エリアを脱出!お別れというよりは取材の如く走り回りましたが、最後は歩いて接近し、マルヤガーデンズ斜めに停車した花2号をパシャリ。祭りの最中に踊り連と一緒に撮影して、さよなら花電車フォトミッションをコンプリート。アホですか?そうかもしれませんが、たぶん歴史に残る貴重な記録に成功したように思います。祭りが終わったら車庫に戻って解体されるだけとなった花2号に、心からお疲れ様と告げました。

 遠くから微かに響く「てんてれんて、てててん、ててれててててん〜」という鹿児島おはら節のイントロ。夕闇を明るく彩るデコレーション。祭りの興奮を鮮やかに思い起こさせる最高の広告塔が静かに去りますが、すでに2019年に引退した500形の504号(1956製)が新花電車として改造中で、2021年3月に完成するそう。スポンサー探しが毎年大変との噂も聞きますが、花電車は鹿児島市民の魂に深く根付いているので、存在価値は大きいと思います。今回撮影した沿線は再開発の真っ只中で、ここ数年で一段と垢抜けそうなエリア。来年はピカピカのハイテク?花電車と、70回記念のおはら祭りが盛大に催されると良いですね。

 ちなみにおはら祭り自体は、一般人の道路立ち入り禁止、フォトコンテスト中止、毎年参加していた娘の中学校も不参加で、見どころとしては新鹿児島県知事の塩田康一氏と、勇退を表明した鹿児島市長の森博幸氏とのコラボ、第14代かごしま親善大使の退任と第16代の就任くらい。14代大迫香菜さんの退任挨拶は明瞭で立派でしたが、声を詰まらせるシーンは毎年のようにもらい泣き。踊り練の幅が観覧エリアの影響で二車線分に縮小されていたため、28mm単焦点のコンパクトカメラでも充分に戦えました。その後黎明館で鹿児島合同写真展を鑑賞し、北埠頭で自衛隊借り上げ高速カーフェリーのナッチャンワールドを下見して帰宅。疲れて爆睡でした。