横須賀スプリングフェスティバル2023

日米親善よこすかスプリングフェスティバルが、4年ぶりにアメリカ海軍横須賀基地で開催されることが決まった。昨年夏の横須賀フレンドシップデーでは入場待機列解消まで3時間という大混雑に直面し、脱水と空腹で気を失いそうになった苦い思い出が残る。基地側も憂慮して、今回は事前に入場時間を選べて申し込める抽選制を採用したところ、見事希望通りに朝8時枠が当選!今度こそゆったり基地を楽しめると思いきや、最高気温が前日より10度も下がり、終日雨模様と予報された。撮影環境はよろしくないが、体だけは濡らすまいと例によってフルゴアテックスの登山装備で駆け付ける事に。いつものように始発で出かけたものの、南武線武蔵小杉乗り換えを忘れ、横浜では京急なのに東急のホームへ降りたりと初っ端からボケっぷりが目立つ。それでも10分遅れで無事汐入駅に到着し、まるで今日行事が何もないかのようにひっそりとした早朝の横須賀を三笠公園まで歩くと、20mほど門からはみ出す形で続く入場待機列の最後尾へと辿り着いた。

 まずは当選者に届いたQRコードをiPadで認証を行い、次に身分証明書の確認。例によって運転免許証しか持って来ずに引き返す来場者が続出する中、空港のセキュリティチェックと同じレベルの手荷物検査と金属探知ゲートによる検査が行われた。さらに艦艇見学の前に再び身分証チェックと簡易的な手荷物検査が行われたり、列に並んでいる間に誘導員からキャリーケースは持ち込めない可能性があると注意され、手荷物検査をパスした後も私だけキャリーケースを引きずるサングラス姿の怪しさが目についたらしく、日本語を話せる私服警備員がしばらく付きまとったため、世間話しながらスパイではないことを説明する機会に恵まれた。こちらとしては特に不純な動機がなかったので楽しい時間であったが、疑われそうな格好はすべきではないと思う。ただ忖度して過去にキャリーケースではなく大きなリュックで参戦したイベントでは案の定腰をやられてしまったため、おそらく使い続けるしかない。

 空が明るくなり小雨も落ち着くかなと思いきや、結局この日はさらに雨足が酷くなり、時折り突風が吹いて傘が裏返る嵐へ。フル防水で体が冷える事はなかったが機材管理が大変で、雨粒が付着したレンズで拭うウエスがびしょ濡れとか、マウントの接点が濡れてAFが作動しなくなるなど、撮る気がどんどん失せる環境であった。朝イチの鑑定見学の列は非常に少なく、やや待ち程度でバースへ入れたが、ここで第7艦隊旗艦ブルーリッジとアーレイバーク級イージス艦ベンフォールドと列が分かれていた。昨年の横須賀地方隊開放ではキャパの大きいいずもがガラガラで潜水艦が大行列だったことを思い出し、先にベンフォールドを選んだのが運の尽きで、なんとブルーリッジに乗艦するために再び2時間並び直す羽目に。途中でブルーリッジを見てからベンフォールドを選べるルールに変わったようだが、誘導には疑問が残る結果となった。

 ベンフォールドは海上自衛隊のイージス艦の原型となったアーレイバーク級の65番艦で、こんごう型にそっくりなシルエット。シャープな船体にトマホーク(対地・対艦)やスタンダード(対空)を打てるVLSランチャーやハープーン、ファランクスなどゴリッゴリの重装備で、Destroyer(駆逐艦)の冠を象徴している。実戦を多く経験しているのは旧型のタイコンデロガ級で、できればそちらへの乗艦を希望していたが、ベンフォールドの艦首からタイコンデロガ級のバンカーヒルを拝めたので良かった。また対岸のバースには巨大な空母ロナルド・レーガンも鎮座していたが、大規模補修の最中で工事が忙しそうであった。一機だけ飛行機の機影を確認したが、これはレガシーホーネットのモック(模型)で、訓練に使用するものらしい。言われてみるとジェットノズルにチープ感が見て取れた。¥3000したが乗員のパッチを買えたのでウキウキしたのも束の間、出口からはそのまま500mほど先の艦艇見学列最後尾まで誘導され、折れかけた心を繋ぎ止めつつ歯を食いしばって再び並ぶ。アホだなぁと思いながら3回目の身分証提示と手荷物検査をクリアして乗艦した甲斐があって、なんとブルーリッジの艦長やチーフとの記念撮影に収まる事ができたのである!待ち疲れたのでそんな事を考える余裕はなかったのだが、たまたま前に並んでいたお姉さんが「私も撮るので写真撮って貰えませんか」と頼んで下さった事がその結果に繋がった。写真撮影が3度の飯より好きな私としては、撮影を依頼されたら依頼者が想定する3倍増しで素敵な写真を撮るのが義務と認識している。その思いが通じてか、なんと私自身も素敵な笑顔(自分で言う)で撮って頂けたのだ。私のチャレンジはきちんと成果が出る事が多くてありがたい。大いに満足して艦内に入ると、さすがはVIP御用達の旗艦らしく、豪勢なパネルがズラリと並ぶ。狭くて急勾配のラッタルを無理やりキャリーケースを持ち上げて2階へ登ったら上甲板に出られた。先ほどのベンフォールドと違ってテニスができそうな平べったい領域に面白みを覚える事は少なかったのだが、これは通信障害を避けるためにアンテナ以外の余計な装備を置いてない事が理由。加えて東北大震災の時には、フィリピンで休暇中だったブルーリッジが乗員に緊急招集を掛けて、支援物資を満載して最初に東北へ駆けつけてくれたそうである。帰宅後それを知り、艦長にお礼を言っておけば良かったと後悔した。記念に¥1000のパッチを買えたが、いずれまた天気が良い日に再訪できればと強く思った。

ほぼほぼ目的を達成して、最後に何か食べて帰ろうと出店を物色したが、見た事がない食べ物ものが多くて手を出しづらい。後にオレオをドーナツ生地で包んで揚げたお菓子が激ウマだったと知ったが、ハチミツに砂糖をぶっかけて食べるようなアメリカン・テイストには笑ってしまう。またほとんどの客が携えていたピザも¥2100〜¥2500ほどで、岩国で食べたので美味いのは知ってるが持って帰るのも大変だと遠慮。結局1時間並んでフードコートに入り、さらにググって人気店と判断したルイジアナ州発祥のフライドチキンPOPEYESに30分並んだ。並んでいる間にiPhoneを充電しようとしたら充電端子に雨水が充満して充電できず、濡れていないメガネ拭きを突っ込んで必死の乾燥作業!ようやく充電できてホッとしつつフードコート内を観察すると、円高前の価格帯と変わらないリーズナブルなメニューばかり。お茶を持参していたためフライドチキンも一番安い¥990円のディナーセットを頼んでみたが、一瞬で提供されて中身もてんこ盛り!スタッフが日本語ペラペラで客捌きがキオスク並に優秀だったので大いに助かった。フードコート内には座れる場所がなかったため外のテントで頂いたが、まず衣がカリッカリのクリスプ感でお煎餅を食べてるかのよう。また濃い目のスパイシーな味付けは衣だけでなく肉にも染み込んでいて、もちろんソースなど必要ない。大量のフライドポテトも同様で、KFCではシロップ付けて食べるビスケットも、味がしっかり付いているためそのまま美味しく頂けた。これは並んだ甲斐があった。最後にマクドナルドで基地限定のビスケットを購入しとりあえず汐入駅まで歩く。疲れもあってそのまま電車に乗ろうと思ったが、一応海上自衛隊の様子だけヴェルニー公園まで確認に出かけたところ、イージス艦きりしまの後部やタイコンデロガ級イージス艦、そしてタグボートの仕事ぶりに加えて、何とそうりゅう型潜水艦の入港、接舷を見ることができたのである!雨も上がって残り物に福とは、まさにコレな幸運でした。